葵はマッチャに連れられて二条城にやってきました。
葵のおばさんが京都に遊びに来るのですが、葵のお母さんが用事で案内できないので、代わりに葵がその役を仰せつかりました。
しかし、京都の見どころはあまり知らず、観光案内もできないので葵は不安でした。
そんな葵の前に現れたのが、伏見稲荷大社で出会ったキツネの男の子、マッチャ。京都に詳しいマッチャは、葵のために、京都の名所の予習に付き合ってくれているのです。
「京都観光で二条城は外せないからね!なんといっても国宝『二の丸御殿』は見逃せないし、有名な『鴬張り(うぐいすばり)』の廊下も体験してもらいたいし、特に歴史や建築、芸術に興味がある人にはたまらないスポットだよ」
マッチャはそう言って意気揚々と葵を連れて二条城に入り込みました。
「二条城はずっと前に来たことがあったと思うけどけど、あんまり覚えてないなぁ。確かに『鴬張り』の廊下で修学旅行生たちがはしゃいでたのは覚えてるけど…」
「葵ちゃんは、鴬張りの廊下がどうしてああやって歩くたびに音がするか知ってる?」
「えーと、説明、聞いたんだけどなぁ…」
頭を抱える葵にマッチャは解説します。
「ここ、二条城は、江戸幕府初代将軍の徳川家康が京都御所の守護、将軍の宿泊場所として建てたから、要はいつ敵が忍び込んでくるか分からないようなピリピリした一面というのをもっていたわけ。
だから、わざとキュッキュと音がでるように廊下を作って『鴬張り』という特殊な廊下に仕上げたんだ」
「へぇ~」
「それにしても『鴬(ウグイス)』なんて、風情ある呼び方だよね」
「たしかにー!もしかしてさ、これ、練習したら『ホ~ホケキョ』とか鳴らせるようになるんじゃないの!?」
(葵ちゃん、違う、そういう事じゃない…)
マッチャは心の中で葵に突っ込みました。
気を取り直して、マッチャは葵を「二の丸御殿」に案内します。
国宝二の丸御殿の見どころはなんといっても、3000面以上のそうそうたる障壁画。
そのうちの約3分の1が国の重要文化財に指定されているということもあり、圧巻の障壁画が次々に目に飛び込んできます。
「中でもぶっちぎりで人気なのは、この、狩野甚之丞が描いた『竹林群虎図』かな。遠待の二の間にあって、これが本当にカッコイイんだよね」
「お~確かにカッコイイ!なんかさ、よく、スカジャンとかに刺しゅうされてそうだよね!」
「言われてみれば、確かに…」
「和って感じ!こういうの、外国の人は好きなんだろうな~」
葵が言う通り、二条城の障壁画は、日本画の力強い面を強く感じられる作品が多いことから、今外国人の人気がどんどんアップしているのです。
「ここなら、確かにおばさんも楽しんでくれそう!ありがとうね、マッチャ」
「まだまだ他にもたくさん名所はあるからね。今度は金閣、銀閣へ行こう」
こうして2人の観光案内予習は続くのでした。