秋の嵐山は紅葉に彩られます。
この時期は、紅葉を眺めながら山の中を行くトロッコ列車が人気です。
そこで、2人は天龍寺へ出かけることにしました。
天龍寺の見どころは、何を置いても「雲龍図」ですが、見事な庭園も必見ポイントです。
その「雲龍図」は、天井に描かれたものと、襖絵に描かれたものとがあります。
法堂の天井にある八方睨みの龍は、日本画家の加山又造氏によるもの。
曾我蕭白(そがしょうはく)が手がけた襖絵の原作は、なんとボストン美術館に所蔵されているくらい貴重な作品です。ここ天龍寺ではレプリカが飾られています。
レプリカでもその迫力と緻密さと芸術性の高さは十分伝わってきます。これは男性からも人気の作品というのがうかがえます。
また、同じく入口すぐのところに飾ってある「達磨絵」も人気を博しています。天龍寺は、アートも楽しめるお寺なのです。
マッチャはうきうきモードで葵を境内に案内しました。
マッチャに案内された葵は思わず声をあげました。
大きな池をぐるっと囲む木々は、紅色、朱色、橙色、黄色、そして緑色など、さまざまな色が織りなす紅葉の絶景を演出していました。
何よりもステキなのは、その色彩が池に映り込んで、さらに奥行きや広がりがある景色になっていたところ。
葵はうっとりしてしまいました。
池に映っているのは、池の周りの木々だけじゃないんだよ
葵は最初、マッチャが何を言いたいのかよく分かりませんでしたが、よくよく池を見てみて、気づきました。
だから嵐山の紅葉を楽しめるスポットって言ったのね!
マッチャは葵に気付いてもらってドヤ顔です。
確かに葵が言う通り、水面には、遠くに見渡せる嵐山も映り込んでいました。
嵐山を彩る紅葉が、ぼんやりと背景に色を添えて、主張しすぎずに主役を引き立てて見事な脇役に徹しているのです。
あの山がなければ、あるいは少し物足りない風景になっていたかもしれません。
自分たちで庭に木を植えるとか石を並べるとか池を掘るとか、そうやって手を入れずに、遠くに見える山や森などの景色を自分の庭の額縁内に借りるっていう発想ってこと
マッチャは得意そうに解説しました。
自然の美しさをお借りして、四季折々の絶景を楽しむ先人たちの粋な楽しみに感心した葵なのでした。