京都の宇治にある萬福寺(まんぷくじ)は、他のお寺とやや違う個性を持つお寺です。一歩入れば、中国と日本の文化が融合した独特のデザインにすぐに魅了されるでしょう。
日本三禅宗のひとつ黄檗宗の大本山である萬福寺について、観光見学ポイントや体験イベントなどをご紹介します。
また、萬福寺にまつわる豆知識や歴史についても、ぜひ参拝前にチェックしてみてくださいね。
【10秒でわかる】萬福寺の見どころと歴史
萬福寺の見どころ
- 創建当初の建築が残る(重要文化財)
- 都七福神めぐりの布袋尊を祀る
- 普茶料理(中国風の精進料理)がある
- ハスの花の名所(6~7月)
萬福寺の歴史
- 創建:寛文元年(皇紀2321)の1661年
- 作った人:中国福建省の隠元禅師(隠元隆琦)
- 開基:4代将軍 徳川家綱
萬福寺の見どころ
黄檗山萬福寺はかなり異質な存在といえるでしょう。というのも、萬福寺は中国僧の隠元禅師(隠元隆琦・いんげんりゅうき)によって開設された中国明朝様式のお寺だからです。
中国明朝様式の伽羅
そのため、萬福寺を散策すると、日本の他のお寺ではほとんどない柄や建築様式が随所に見られます。
たとえば「卍くずし」の柄の廊下などの欄干を指す勾欄(こうらん)。どことなく日本人にはラーメンのどんぶりの内側によくある柄を思い起こさせ、中国っぽいと感じる人もいるはず。
実際には、卍くずしは太陽が光を放つ様子です。どんぶりによくあるうずまき状のデザインは雷の様子を表したものですので、モチーフは少し違います。
また、龍の腹をイメージしたというアーチ型で蛇腹の構造になっている蛇腹天井のある廊下も見どころです。
さらに先へと進んでいくと、有名な大きな木魚を見られます。約2mの木製の魚は正式には開ぱんといわれ、行事や儀式の刻限を知らせるために使われるものです。
実は、木魚がお寺で使われるようになったのも、この萬福寺からなのです。
俯瞰してみると、萬福寺の広大な領地にある建物の配置自体も、すべて中国明朝の様式であり、京都に居ながら壮大なスケールで異文化を体験できます。
主要な伽藍の周囲や間は、廻廊により縦横に結ばれており、上空から見ると全山で龍を表すといわれ、「龍の伽藍」と称されています。
萬福寺の布袋尊
見るだけでご利益がありそうな、貫禄たっぷりの布袋尊はぜひ見ておきたいところ。天王殿に安置されている弥勒菩薩坐像は、都七福神めぐりでもおなじみの布袋尊です。
萬福寺だけに満腹なのかと思うようなでっぷりとしたお腹の布袋さんが、ニコニコと笑いかけてくれますよ。
1663年(皇紀2323)寛文3年のもので、像高110.3cm、木造、漆箔。来日していた明の仏師 范道生(はんどうせい)の傑作と言われています。
なお、2月と8月を除く毎月8日は「ほていまつり」が実施されていて、法要、お茶会、音楽演奏などを楽しめます。
萬福寺の普茶料理
予約をすれば、普茶料理(ふちゃりょうり)という隠元禅師が中国から伝えた精進料理を食べることもできます。300年以上の歴史を持つ食を味わってみるチャンスです。
ただし、いつ行っても食べられるという訳ではありませんので、事前の問い合わせと予約が必要となります。
軽装で参加できる禅体験や研修も人気があります。座禅や食事作法などを初めての人にもわかりやすく説明してくれた後、実際に体験もできるので、禅の文化を学ぶのにぴったりです。
萬福寺のハスの花
萬福寺は蓮の花の名所としても知られており、放生池の群生も見事です。
約60品種、約160鉢のハスが色とりどりの花を咲かせ、6~7月に開花し、大勢の参拝者が訪れます。中でも吉兆を呼ぶという、一つの茎に二つの花をつける「双頭の蓮」は必見。
萬福寺の歴史について簡単に説明
もともと隠元禅師は中国にいましたが、何度も日本に来てほしいと乞われため、63歳のときに弟子20名とともに1654年(承応3年)にやってきました。
黄檗山萬福寺が建立されたのは、1661年のことです。隠元禅師が中国で高僧として住んでいたお寺が、中国福建省福州府福清県にある黄檗山萬福寺だったことから、開創したお寺にも同じ名前がつけられました。
この隠元禅師は日本人に多大な影響を与えています。たとえばインゲン豆を中国から伝えたのも隠元禅師です。インゲン豆のインゲンは実は隠元禅師が由来だったのですね。
また、スイカ、レンコン、タケノコなども隠元禅師が伝えてくれたおかげで、日本人の食卓は豊かになりました。
他にも、美術・建築・音楽など、さまざまな文化を広めています。
隠元禅師が日本に来たのは鎖国中の江戸時代だったので、こうした食文化や美術、建築などの文化が日本に伝わるのは異例なこと。
日本の歴史のなかに隠元禅師が伝えた中国文化の影響はとても大きかったと言えるのです。
なお、萬福寺の主要な建築物、回廊、額などは、国の重要文化財に指定されています。
萬福寺の基本情報
黄檗宗は、臨済宗、曹洞宗につぐ日本三禅宗のひとつ。萬福寺の16棟と松隠堂の7棟の計23棟と回廊などが重要文化財に指定されています。
唐様書道の達人だったといわれる隠元隆琦・弟子の木庵性とう(もくあんしょうとう)・即非如一(そくひにょいち)の書「黄檗の三筆」も有名。隠・木・即(いんもくそく)とも。
2000年のJR東海「そうだ京都行こう。」夏のキャンペーンで、「スイカ、れんこん、精進揚げ、けんちん汁、インゲン豆。そしてダイニングテーブルに椅子。そうか、「一家だんらん」は、インゲンさんが持ち込んだってワケだ。」と紹介されています。
住所 | 京都府宇治市五ケ庄三番割34 |
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電話番号 | 0774-32-3900 |
アクセス | JR奈良線・京阪宇治線 黄檗より徒歩約5分 |
拝観時間 | 9:00~17:00(受付は~16:30) |
拝観料金 | 大人 500円、小中学生 300円 ※7月8日(月)は無料 |
所要時間の目安 | 約30~60分 |
公式サイト | https://www.obakusan.or.jp/ |
まとめ
萬福寺の見どころと歴史について、分かりやすく簡単にまとめました。日本の寺院をいろいろ巡っている方にとっても、他にはない貴重な独特のデザインが楽しめるお寺が萬福寺です。
欄干などの卍くずし、丸い窓、桃符(とうふ)といわれる桃の形の飾り、アーチになった黄檗天井、独特の色使いなどなど、異国情緒あふれる景色を堪能してくださいね。
ちなみに、萬福寺はけっこうな広さがありますので、歩きやすい服装&靴が必須ですよ。