かつての天皇が暮らしていた家、それが京都御所。
今までは事前に申し込みが必要だったり、一般公開を待たなければいけませんでしたが、2016年から通年公開になり、いつでも気軽に見学ができるようになりました。
天皇がどんなところで暮らしていたのか、京都御所には何があるのか、気になった葵はマッチャを引き連れて京都御所にやってきました。
中へ入る前に荷物チェックがあり、何やら物々しい雰囲気に圧倒されてしまった葵でしたが、マッチャの「大切な文化財だからね」という一言で、なるほど、と納得しました。
朱色の立派な柱に、思わずため息が漏れてしまう葵に、マッチャが話しかけました。
「葵ちゃん、この奥に見えてるあれが『紫宸殿(ししんでん)』って言って、天皇の即位式とかを執り行った大切な場所なんだよ。」
「へ~、じゃあ実際にここで暮らしていたっていうよりは、行事のために使われていた空間ってことね。」
「実際に日常生活を送っていたのは『清涼殿(せいりょうでん)』っていうこっちの方なんだ。」
マッチャに案内された清涼殿は、豪華絢爛!という雰囲気ではありませんでしたが、暮らしていくには住みやすそうな、落ち着いた造りでした。
葵が想像していたよりも小ぢんまりとしていましたが、もちろん普通の住宅とは比べ物になりません。
「京都御所は庭もステキなんだ!」
マッチャに庭へ連れていってもらった葵は、思わず「おぉ~」と声をあげました。
確かにステキな日本庭園!ちらちらと紅葉しはじめの木々と、常緑樹の緑色が絶妙に交じり合って見事でした。
周りを見ると外国人観光客の人がパシャパシャと写真を撮っています。
たしかに、これぞ「ジャパニーズ!」という雰囲気。
京都御所は、金閣寺や銀閣寺、清水寺などと比べると、定番の観光地というイメージが控えめでしたが、海外からの旅行客の方はこんなところにまで立ち寄るんだなぁと葵は少し嬉しくなりました。
京都御所があるのは、京都御苑の中。京都御苑は広い敷地の国民公園で、入園は無料なので近所の親子連れがよく遊びに訪れています。
「緑がいっぱいで気持ちが良いね。」
葵は京都御苑の中をてくてく歩きながら伸びをしました。
「犬を連れてる人もたくさんいるし、市民の憩いの場になっているんだね。」
「よく海外旅行とか行くと、世界遺産の前で日常生活を送っている地元の人たちを見かけて、いいなぁと思ってたけど、よく考えてみたら私も同じような環境で暮らしてるってことなんだよね」
葵がそう言うと、マッチャは
「おー!やっと気づいた?そうだよ。葵ちゃんは超贅沢な環境で暮らしてるんだ。これからもぜひ京都の事をもっとよく知って、魅力に気付いていってね」
とニッコリしました。